COLUMN
2020年1月6日
家具と素材を活かした空間のつくり方 Vol.3
仮設の展示空間や移動式家具のデザイン:Sony Design MAKING MODERN 京都
デザイナー 松本直也
Sony Design MAKING MODERN京都
パリ発のバッグブランド「コート&シエル(コートエシエル)」や飲食店舗「博多廊」をはじめ、
多くの空間や家具デザインを手がけている松本直也さん。
家具や素材感を活かしながら、人々が集う居心地のよい空間を生みだすヒントをうかがいました。
これまでお話をうかがってきたアパレルや飲食関係など商業施設のほか、「Sony Design MAKING MODERN 京都の会場構成」など仮設的な展示空間のデザインも多く手がけておられます。期間限定の仮設空間だと、アプローチもかなり異なりそうですね。
松本さん(以下:松本)
たしかに、考え方がぜんぜんちがいます。輸送や在庫保管のときにかさばらないといったことから、ノックダウン(部材のままで運んで自分たちで組み立てる方式)の什器にすることも多いです。また、折り曲がったり畳めたり、ある意味で「つぶれる」デザインが良いこともあります。什器自体が動くことや、同じマテリアルでも汎用性があってほかでも使える、といったことが展示会の空間構成ではよくテーマになりますね。コスト感の違いもあります。
Sony Design MAKING MODERN京都
ソニー様の展示は、30年の歴史展ということで初期のラジオから最新の厚さ5mmのテレビまで、さまざまな家電が並ぶという内容でした。クライアントからのリクエストが、家電との対比で木をつかっていきたいということだったんです。ただ、素直に木をつかっていくとコスト面で合いませんし、安い木を使うとなるととても安っぽくなってしまいます。そこでこの展示では木目がほぼ出ないシナベニヤをつかい、木と家電がうまく調和する展示空間としました。家電をみていても木目が気にならず、また、コスト面の条件もうまくクリアできました。
Sony Design MAKING MODERN京都
家具のデザインのほか、移動式コーヒーショップの屋台デザインもされていますね。
松本
京都市を中心に活動している「暮らしランプ」という障がい者支援組織のためにデザインさせていただきました。家具工場ではなく、大工さんの手で組んでもらっています。また、素材もネットで購入できるものを選びました。そうやって「誰でもつくれる」というところにこだわりながら、コストもおさえました。
3yatai(移動式コーヒーショップの屋台デザイン)
屋台は「移動する」というのが一般の家具と違って大変そうなイメージがあります。
松本
そうですね、屋外でも使用する屋台では、強度が重要になってきます。屋台のなかにはコーヒーを淹れるための道具一式をいれて移動するんですが、キャスターは空気式のタイヤで凹凸にも対応できるようにしました。そういえば、この屋台が実際につかわれている現場にたまたま出あったことがあるんです(笑)。屋台が見えないくらい、商品が存分に活用されていて嬉しかったですね。
松本さんがこれからどんなデザインのお仕事を手がけていきたいか、教えていただけますか。
松本
独立した当初、5年ほど前には、大阪など関西圏での仕事が9割を占めていました。いまの割合としては東京や、関西以外の地方のお仕事が増えてきています。フットワークを軽くして時代に乗っていくべき職業だとおもっていますので、東京はじめ、あちこちの物件により柔軟に対応していきたいと考えています。海外でのお仕事もしていきたいですね。空間などの物件はもちろん、家具やプロダクトで展開していく可能性もあります。
3yatai(移動式コーヒーショップの屋台デザイン)
PROFILE
松本直也NAOYA MATSUMOTO
デザイナー/ 株式会社松本直也デザイン主宰
大阪府出身。成安造形大学卒業後、 野井成正デザイン事務所勤務を経て
2013年 松本直也デザイン設立。
(2017年 株式会社松本直也デザイン設立)
心踊るコミュニケーションの創造を軸に国内外の様々なクライアントと
プロジェクトを進行中
聞き手
牧尾晴喜HARUKI MAKIO
建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。
このコラムでは、人々が集う居心地のよいインテリア空間をつくりだしている、国内外で活躍されているデザイナーへインタビューをしていきます!
Photo / takeshi asano
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