COLUMN
2019年8月5日
家具と素材を活かした空間のつくり方 Vol.1
ブランドイメージにあわせた空間づくり:コート&シエル(コートエシエル)
デザイナー 松本直也
コート&シエル ルクア大阪店
パリ発のバッグブランド「コート&シエル(コートエシエル)」や飲食店舗「博多廊」をはじめ、
多くの空間や家具デザインを手がけている松本直也さん。
家具や素材感を活かしながら、人々が集う居心地のよい空間を生みだすヒントをうかがいました。
まずは、バッグのブランドである「コート&シエル(コートエシエル)」のルクア大阪店のお話からうかがいます。コート&シエルは、独特なフォルムのバックパックが目を引く、パリ発のブランドです。駅ビルのなかという立地ですが、ブランドの世界観を表現するうえで、どのような工夫をされましたか?
松本さん(以下:松本)
一般的な店舗の内装設計では天井があって当然ですが、この駅ビルではフロアで共用の天井をつかうため、その共用天井まで各ブランドの空間を立ちあげてはいけないんですね。ですから、たとえばこのルクア大阪店では1m80cmという高さの制限があり、その範囲内の空間で、ブランドの世界観を表現しています。ただし、鏡になっている部分だけは高さを出してもOKという条件なので、ここだけは1m80cmを超えて、ブランドのグラフィックとロゴが入っています。駅ビルというのは、じつはデザイン上のルールがかなり厳しい場所なんです。
コート&シエル ルクア大阪店
海外ブランドということでご苦労されたエピソードなどあれば教えてください。
松本
そうですね、ブランド側がイメージしている世界観・空間やそれを表現するのに適した素材があり、そのマテリアルをそのまま使えると良いのですが、日本では不燃性や防火性の問題で同じ素材が使えなかったり、あるいはとても高額になってしまったり。また、そもそも入手が非常に困難、といったケースもありますね。今回も、そういう部分では苦労がありました。
コート&シエル 名古屋ラシック店
コート&シエルのブランド店舗を複数手がけておられますが、ルクア大阪店と名古屋ラシック店は2018年、大阪・北堀江の路面店は2016年の竣工です。同じブランドでも、立地や時期によってデザインに違いはありますか?
松本
場所よりもシーズンによる違いが大きいです。同じブランドでもシーズンによってディレクションが変わっていきます。コート&シエルの場合には、北堀江店はルクア大阪店や名古屋ラシック店よりもひとつ前のシーズンで、ディレクションに違いがあったんです。だから、それに基づいて設計者側がどうアウトプットするかも当然違いました。
コート&シエル 大阪店
さまざまなブランドが並ぶ駅ビル内の店舗にくらべると、路面店では目的をもってこられるお客様が多そうです。空間のデザインも変わりそうですね。
松本
そうなんです。空間としては、まずはファサードのガラス面では、商品がしっかりと、そしてはっきり見えるように設計しました。また、特徴のある形状をしているバッグなので、バッグ自体のデザインがアイコンとして目を引くように考えました。同じビルの上階が販売元のオフィスになっていることもあり、商品数やしっかりした接客・スタッフ対応という点でも、濃密な販売のスタイルが可能な空間になっています。
木が印象的な空間ですね。
松本
ありがとうございます。ブランドのシーズンのディレクションにあわせ、バッグのディテールを引き立たせるために必要なマテリアルを厳選しました。樹種はナラ材、日本の素材をつかっていて、木柄がもっているシンプルな素材感と色目を活かすデザインにしました。全体としてはブランドコンセプトのホワイト、ブラック、ナチュラルウッドという三色のコーディネートです。バックのデザインをモチーフにしたディテールを抽出して、照明器具とストックファニチャーにアウトプットしています。
コート&シエル 大阪店
PROFILE
松本直也NAOYA MATSUMOTO
デザイナー/ 株式会社松本直也デザイン主宰
大阪府出身。成安造形大学卒業後、 野井成正デザイン事務所勤務を経て
2013年 松本直也デザイン設立。
(2017年 株式会社松本直也デザイン設立)
心踊るコミュニケーションの創造を軸に国内外の様々なクライアントと
プロジェクトを進行中
聞き手
牧尾晴喜HARUKI MAKIO
建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。
このコラムでは、人々が集う居心地のよいインテリア空間をつくりだしている、国内外で活躍されているデザイナーへインタビューをしていきます!
Photo / takeshi asano
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連載記事
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