COLUMN
2020年9月14日
建築とデジタルを融合した、
インタラクティブな空間づくり Vol.2
デジタルによる一般化で空間の可能性が広がる:パンとエスプレッソと自由形、
なんとかプレッソ
建築家 浜田晶則
パンとエスプレッソと自由形
なんとかプレッソ
複雑な情報を細やかに制御する手法で建築やデジタルアートの設計を手がける、浜田晶則さん。
チームラボアーキテクツのパートナーとして手がけられた作品や
最近の建築作品についてお話をうかがいました。
東京の自由が丘にあるベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと自由形」は有機的な曲線の壁が印象的ですね。
浜田さん(以下:浜田)
ありがとうございます。パンのお店ということで、包まれるようなやわらかな空間を提案しました。たとえばターミネーターみたいな硬いロボットよりも、ベイマックスみたいなやわらかいロボットのほうが実際に触ってみたいですよね。20世紀型の重くて硬い工業的なものよりも、「軽くてやわらかい」というのが21世紀の時代のテーマになると考えています。
パンとエスプレッソと自由形
3次元的な曲面を施工するために工夫されたことはありますか?
浜田
人の動線や集まり方を考慮しながら、既存の壁や柱をアンカーポイントとして、パンの生地のように膨張と張力が均衡した状態をコンピュータ上でシミュレーションして形をつくる設計プロセスでした。壁面は曲率を計算し、それを可展面になるように近似して平面で切断したボードを、CNCルーターで加工した曲線の合板下地に曲げながら張り付け、パテと塗装で仕上げるという工法をとりました。これをすべて左官職人さんにしてもらうとなると時間もコストもかかりますし、3次元的な設計内容を現場で共有することは困難です。ここでは、自由曲面の施工をどうやって一般化・汎用化できるかを考えました。
テーブルごとに吊るされたランプシェードもユニークです。
浜田
座ったときに小さな空が見えるように、ランプシェードの内側にはいろんな時間の空模様を描いています。夕焼けや流れ星だったり、レジ前はパンが空に浮いているイラストもあります。「今日は夜の席だ」といった感じで、お客さまにそれぞれの絵から物語を想像して楽しんでもらえるとうれしいですね。クライアントがコピーライターをされていて、デザインのストーリーを一緒に考えていきました。
パンとエスプレッソと自由形、ランプシェード内側
同じく自由が丘にあるベーカリーカフェ「なんとかプレッソ」では、サンドイッチの上下のパンが違う種類で「不一致」になっている「サンド不イッチ」など、メニューのコンセプトも個性的です。
浜田
そうですね、キャラクターが濃い商品がたくさんあるので(笑)、どうすればさらによく見せられるかを第一に考えました。パン屋にはトレイが必ずありますが、さまざまな形のトレイをつくり、そのトレイを大きくした、相似形のパン棚が宙に浮かんでいるように配置しています。パンを取るトングも一つひとつ違うものを注文して、異なる色を塗っています。
なんとかプレッソ
ここでもやわらかなデザインを提案されていますね。
浜田
幾何学的でない自然な形になることをめざして設計しました。パンには特定のやわらかさという物性があり、直方体につくろうとしてもやわらかい外形になるじゃないですか。その一つひとつ異なる形になってしまう性質がいいなと思うんですね。カーテンもトレイと相似形のドットパターンになっているデザインです。生き物はみんなそれぞれ違う有機的な形をしていますよね。そういう形が触れる人に親しみのある印象をつくるのだと思います。
PROFILE
浜田晶則AKI HAMADA
建築家
1984年富山県生まれ。東京大学大学院修士課程修了後、Alex Knezoとstudio_01を設立。2014年に浜田晶則建築設計事務所を設立し、同年からteamLab Architectsパートナーを務める。2014年~2016年、日本大学非常勤講師。主な作品に「綾瀬の基板工場」、「魚津埋没林博物館KININAL」など。複雑な情報を細やかに管理・制御する手法を用いて、建築やデジタルアートの設計を行っている。
聞き手
牧尾晴喜HARUKI MAKIO
建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。
このコラムでは、人々が集う居心地のよいインテリア空間をつくりだしている、国内外で活躍されているデザイナーへインタビューをしていきます!
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連載記事
建築とデジタルを融合した、
インタラクティブな空間づくり(全3回)