COLUMN

2018年5月16日

各地域特有の要素を組みこんだコミュニティ型ワークスペースWeWork Vol.3
各地域の特性を活かしたコミュニティ型ワークスペース


クリエイティブ ディレクター アッシュ・エヴリィ
©WeWork
日本をふくめ世界28カ国105都市、485以上のコミュニティ型ワークスペースを展開・運営するWeWork。
WeWork Japan合同会社(以下WeWork Japan)のクリエイティブ ディレクターであるアッシュ・エヴリィさんに、
グローバル共通のデザイン要素、日本や各地域で特有の要素を活かしたデザインについてうかがいました。
先ほどはWeWorkの日本特有の要素についてうかがったのですが、日本のなかでも、それぞれの街で個別のデザインを展開しておられますね。デザインの形にしていったプロセスなど、いくつか教えていただけますか?
アッシュ・エヴリィさん(以下:エヴリィ)
たとえば、横浜の例でみてみましょう。横浜のWeWorkに入ると、まず目につくのが旗です。これは港町の横浜にちなんでいて、国際信号旗、つまり、実際にメッセージを伝えることができる、旗の文字のようなものです。この旗を船のマストに揚げると、他の船がそれを解読するという仕掛けで、まさに信号のようなものですね。横浜にはたくさんの船が停泊していてフェリー乗り場もあり、これを私たちのスペースに取り入れようと決めたのです。じつはこの旗を組み合わせて「Welcome WeWork(ようこそ、WeWorkへ)」としています(笑)。初めて信号旗を見るひとにとっては意味までは分からないでしょうが、コミュニティのメンバーが教えてくれるかもしれません。
最近オープンしたWeWork東急四谷では、メインラウンジの壁に、酒を入れる升を使ってWeWorkと書きました。升の中を着色して格子状に並べてあり、よく見ると文字が浮かびあがってくるという仕かけです。
建物の歴史を引き継いでいるデザインもあります。乃木坂の拠点では、ビルの前の所有者だった三陽商会の立派な照明看板(「SANYO」)が外壁に掲げてありました。私たちはビルを借り受けた後もその歴史に敬意を表したかったので、この看板をただ取り外す代わりに、その一部「YO」をアート作品として会議室に飾ってあります。
それぞれの立地や建物には素晴らしい歴史があり、どの場所も特別です。私たちは単に日本のWeWorkを作っているのではなく、「WeWork乃木坂」「WeWorkオーシャンゲートみなとみらい」「WeWork東急四谷」というように、それぞれの場所にあわせて空間を作っています。それぞれの場所で見つけた特性を、どうやってデザインに落とし込むかというのはとてもやりがいのあることです。
©WeWork
クリエイティブディレクターとして空間設計やデザインのお仕事をされていますが、エヴリィさんにとって、「デザイン」というものを意識されるようになったきっかけなどあれば、教えていただけますか?
エヴリィ
あれは私が11歳くらいだったかとおもいますが、1992年、バルセロナオリンピックがありました。私はオーストラリア出身なのですが、その年のオリンピックでオーストラリアの自転車チームはすばらしい自転車を開発しました。この自転車は見た目も素晴らしく、また、当時のオリンピックに出場しているどの自転車よりも速く走れるようにデザインされていたのです。デザインも性能もあまりにも優れていたので、ルールの変更が検討されたほどでした(笑)。また、これがRMIT(ロイヤルメルボルン工科大学)でデザインされていたことにも興奮をおぼえました。
何かを「デザインする」なんて、それまでは考えたこともありませんでした。でもこの自転車を見て、どんなものでもデザインされているということに初めて気づいたんです。とても美しいものが、素晴らしく機能的な側面も兼ね備えることができる。デザインは人が何かを成し遂げようとするときに役立つものだと認識しました。間違いなくあの体験で、私はデザインを自分の将来の仕事ととらえるようになったのです。
これからのデザインで大切にしたいことをお聞かせください。
エヴリィ
私たちWeWorkがデザインをするときには、ただ空間をデザインしているわけではなくて、まずメンバーのためにデザインしているのです。そのためには、どのような体験が望まれているのかを考え、それから空間のことを考えます。その空間にどのようなアートがあればいいか、どんな家具があればいいか、といったことも考えますが、まずは私たちのスペースに来てくれる人について考えることから始まります。だから美味しいコーヒーやビールを設置していたり、コミュニティスペースでのイベントや朝食会を企画したりしていて、こういったことがとても大切なんです。来てくれるメンバーがいなければ、また、メンバー間での交流という目的がなかったら、私たちがどれだけいい空間をデザインしても何の意味もないでしょう。これからも、まず人のためにデザインすることを大切にしていきたいですね。WeWorkにはそれを実現するチームがあるんです。
©WeWork
(*この記事は、英語でおこなったインタビューを日本語でまとめたものです)

PROFILE

アッシュ・エヴリィ Ash Every
WeWork Japan クリエイティブ ディレクター
オーストラリア メルボルンのスウィンバーン大学にてインテリアデザインの学位を取得。その後、東京のインテリアデザインスタジオ、Puddleにてシニアデザイナーとして海外ブランドの店舗デザインなどに従事する。その後、スノーピークのリテールスペースデザイナーとして日本と米国のデザインプロジェクトを担当。2018年11月にWeWork Japanのクリエイティブ ディレクターに就任。グローバルで共通しているデザインを盛り込みつつも、各拠点に日本や地域特有の要素を活かしたデザインを取り入れたスペースのディレクションをする。これまでにWeWorkが展開されている全ての都市(東京・横浜・大阪・福岡・名古屋)の拠点デザインを指揮。
聞き手
牧尾晴喜 HARUKI MAKIO

建築やデザイン関係の翻訳・通訳などを通じて、価値ある素材やデザインがより多くのひとに届くようにサポートしている。フレーズクレーズ代表。
一見普通だけれどちょっとこだわりのある家具や空間が好き。

このコラムでは、人々が集う居心地のよいインテリア空間をつくりだしている、国内外で活躍されているデザイナーへインタビューをしていきます!

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連載記事

各地域特有の要素を組みこんだコミュニティ型ワークスペースWeWork (全3回)