SOGOKAGUには
エレファントチェアや
ヴィストなど、生物性をモチーフにした商品がいくつかありますが、TORNOも見た目からわかるようにカブトムシをイメージしてデザインされました。開発当初の商品名は「ビートル」。SOGOKAGUにはめずらしい、座面と脚部にともに成型合板を用いたイスで、「細さと強さ」という、相反する要素を実現することを開発テーマとしていました。そして、「細く、強いもの」の象徴として、カブトムシをモチーフにすることになったのです。
成型合板の椅子を
TORNOの素材である成型合板は「プライウッド」とも呼ばれ、家具業界では古くから使われてきた技法です。その起源は古代エジプトにまで遡ると言われています。成型合板とは1ミリほどに薄くスライスした木材(単板)を1枚ずつ重ねて接着し、熱を加えながら型にはめて曲面形状を形作る木工技術のことを言います。同じように木材を曲げる技術に「曲木」がありますが、曲木は、無垢材に水分と熱を加えて圧縮して曲げる技術になります。
THE PROCESS
アアルトとイームズ
家具に成型合板を用いた先駆者として挙げられるのがアルヴァ・アアルトとチャールズ&レイ・イームズです。アアルトは現在でも不朽の名作として親しまれているスツール60に代表される、「Lレッグ」と呼ばれる曲木の技法を開発しました。無垢材の先端から曲げる部分まで細い平行な切込みを数ミリ間隔で入れ、その間に薄い板を挟み込んで接着した後、熱を加えながら曲げるという製法です。
チャールズ&レイ・イームズもこのアアルトの技法に大きな影響を受けたと言われています。イームズ夫妻が三次元成型の成型合板を開発すべく思考錯誤していた頃、第二次世界大戦中に彼らの知識と技術がアメリカ海軍の目に留まり開発されたのが、負傷した兵隊の足を固定する添え木、「イームズレッグスプリント」です。その後、彫刻や子供用家具など様々な試作品を経て開発されたのが「イームズプライウッドチェア」です。
こだわりの「細さと強さ」
TORNOの形状を細かく見ると、この、イームズプライウッドチェアに影響を受けたことが見て取れます。座面から背中にかけてのラインはもちろんのこと、体を支える細くて頑丈な成型合板の脚部はイームズプライウッドチェアの脚部を思わせます。
SOGOKAGUが特にこだわったのが「細さと強さ」。この相反する条件は、プライウッドの枚数を1枚の合板の中で変えることができるイタリアの工房での優れた技術によって実現されました。強度が必要な腰の部分は積層を厚くし、強度の必要性が低い背や座は薄くすることで「細さと強さ」を実現しています。
また、腰の部分を切り欠くことで、必要最低限な要素でしっかりと体を支えながら、軽量で持ちやすい工夫がされているのです。