私たちは、相合家具が目指す「美しく丈夫なコントラクト家具」を生み出す場所として、三重県伊賀市にDESIGN LABOを設立しました。2015年秋の事です。設計は、東京オリンピックが開催された国立競技場を手掛けた建築家、隈研吾氏。隈研吾氏が目指したのは、「やわらかい家具のような建築」です。相合家具が得意とするモールドウレタンの被膜で覆われたような、素晴らしい建築が完成しました。モールドウレタンは型に専用の液を流し込んで発泡させるため、自由な3次曲面を可能にします。そのため、人間工学に基づいた身体へのフィット感と、空間に映える高いデザイン性を兼ね備えた商品を生み出すことができます。この2つのこだわりを備えた曲面形状を実現するために、DESIGN LABOの研究棟には5軸と3軸のマシニングセンターを装備しています。この2つのマシニングセンターにより、原寸モデルによる検証が可能になりました。
モールドウレタンの型を自分たちの手で
DESIGN LABOでマシニングセンターによる1/1モデルの削り出しが可能になると、次のステージとして、モールドウレタンの追求が課題となりました。その課題に向き合うため、モールドウレタンの基礎である金型の製作にDESIGN LABOで取り組むことにしたのです。金型のことを知るために、まずは海外も含めモールドウレタンの金型を作っている工場に見学に行きました。どのような工程で金型を作るかを理解し、研究を重ね、まずはマシニングセンターで発泡スチロールによる金型の模型を作ることで、DESIGN LABOで金型を作る可能性が見えてきました。
THE PROCESS
「誰にも愛されるイス」を目指して
一般的な金型はアルミなどの金属で作りますが、DESIGN LABOでは金型の素材にもこだわりました。様々な素材で試行錯誤を繰り返し、最終的にドイツのメーカーが製造している素材に行きつきます。しかし、その素材で作れる金型の大きさに限界があり、金型として使えるデザインが限られたため、比較的小ぶりなスタンドチェアの開発に着手することになりました。目指したのは、座り心地やデザインはもちろんですが、プラスの要素として「誰にも愛されるイス」。商品がお客様の手に届くまでには、いろんな人による工程を踏みます。張りの職人や脚部の取り付けの担当者と打合せを繰り返し、いろんな意見を聞きながら形状を決めていきました。原寸大モデルで張りの検証を繰り返し、ファスナーの位置を確認し、ファスナー用の溝を作ることで、美しく、脚部の取り付けもしやすいスタンドが完成しました。
DESIGN LABOでモールドウレタンの金型から作った初めてのモデルの誕生
シェルムは、こうしてDESIGN LABOでモールドウレタンの金型から作った初めてのモデルです。製造の工程まで考え抜いたデザインですが、腰をしっかりと包み込む安定感のある座りを実現し、まさに機能性とデザイン性を兼ね備えたスタンドチェアと言えます。