ゼロからスタートしたプロジェクト。
製品化に漕ぎ着けたことは、貴重な経験。
さまざまなモノづくりについて、単純にモノをデザインするということだけではなく、そのデザインをどのようにマネジメントするのか。それが、私たちのゼミ「製品デザイン計画研究室」のテーマです。たとえばある製品を、「どうすれば、より低資源でモノづくりができるのか」という課題について、素材や生産工程、利用シーンなど、そのモノに付随するさまざまなことも含めてトータルにデザインしていくという課題に取り組んでいます。
椅子が持つ本来の機能は、非常にシンプルです。それゆえ、学生にとっても取り組みやすさはあったと思います。しかも、実際に製品化される可能性があるというのは大きなモチベーションにもなるので、このプロジェクトに興味を持って参加する学生も数多くいます。とはいえ、5年前にプロジェクトがスタートした当初、学生たちには椅子のデザインに関するノウハウもなければ、その製造工程についての知識もありませんでした。ですから、今回の製品化までには数々の試行錯誤を重ねてきました。
このプロジェクトを通して、学生たちには驚くほどの成長がありました。日頃から多様なデザイン演習などは行っていますが、実際に製品化されることを目的にデザインに取り組むとなると話は別です。リサーチも必要ですし、マーケティングやブランディングの視点も要求されます。自分本位のデザインではなく、社会や市場とコミットすることを前提にデザインが製品へと磨かれていくプロセスを経験することは、得難い経験だったと思います。
京都工芸繊維大学
デザイン・建築学系 准教授
木谷 庸二