ホームユースの場合、基本的にはその家に住む住人しか家具を使用しません。ダイニングチェアに座ることを考えても、食事の時とそれ以外におやつを食べたり、勉強したりすることもあるかもしれません。しかし、1日中同じイスに座り続けるといった状況はホームユースではまずありません。さらに、自分の家の家具であるため、多くの人が大切に扱います。
しかし、業務用の場合、店舗やオフィスなど、基本的に公共スペースなので不特定多数の人が入れ替わり立ち替わり長時間に渡って利用することが考えられます。また、家具を使うすべての人が大切に家具を扱ってくれるという保証もありません(家具メーカーの社員としては、大切に使ってほしいのですが!)。ですので、業務用家具の場合、ホームユースの家具と比べて、消耗や破損が生じる可能性が高いのです。
-強度試験と耐久性試験
実は、家具の強度や耐久に関しては、日本産業規格、いわゆるJIS規格で明確に定められています。
JIS規格では対応国際規格であるISO 7173に整合を図り、国際一致規格にすることを目的として「JIS S1203」の中で「家具-いす及びスツール-強度と耐久性の試験方法」という項目で細かく定義されています。この規格の中では、いすやスツールの定義から試験方法、試験環境、試験の条件や適用の範囲に至るまで細かく記載されています。家具(いす・スツール)の試験内容は全部で13の項目に分かれて記載されています。
7.1 座面の強度試験
7.2 背もたれの強度試験
7.3 ひじ部の静的水平力試験
7.4 ひじ部の静的垂直力試験
7.5 座面の耐久性試験
7.6 背もたれの耐久性試験
7.7 脚部の静的前方強度試験
7.8 脚部の静的側方強度試験
7.9 底部の対角強度試験
7.10 座面の耐衝撃性試験
7.11 背もたれの耐衝撃性試験
7.12 ひじ部の耐衝撃性試験
7.13 落下試験
様々な負荷がかかるコントラクトチェアの耐久性を高めるためには、多角的な試験が必要です。
このため、SOGOKAGUでは設計段階における検証はもとより、引き渡し後の使用状況を想定し、人間の行動・動作の特徴を採り入れた試験によってさらなる高品質を目指しています。
業務用家具は、様々な用途で特定できない行動や利用者が想定されるので、ホームユース家具よりも安全性や使い勝手、快適さが求められます。よって長く安心してお使いいただくための強度・耐久性を高めることが最も重要な項目になります。
2015年、SOGOKAGUは「美しく丈夫なコントラクト家具」を生み出す場所として、建築家の隈研吾氏に設計を依頼し、「DESIGN LABO」を設立しました。DESIGN LABOではSOGOKAGUの50年以上の経験を活かして、様々な項目があるJIS規格の中で「コントラクトユース」に重要な項目を精査し、更に人間の行動・動作の特徴を取り入れた試験による、「5つの自社基準」を設定し、強度試験、耐久試験を実施しています。SOGOKAGUが実施している5つの自社基準試験は次の5項目になります。
1.繰り返し衝撃試験(JIS S1032:1991の2〜3倍相当)
2. 座面と背もたれの強度試験(JIS S1203:1998 7.8/ JIS S1203:1998 7.6区分4.5相当)
3.座面と背もたれの耐久試験(JIS S1203:1998 7.5 / JIS S1203:1998 7.2区分4.5相当)
4.脚部の静的側方強度試験(JIS S1203:1998 7.8区分4.5相当)
5.落下試験(JIS S1203:1998 7.13区分4.5相当)
JIS規格では試験区分を5段階に分け、一般的にはホームユース家具では区分2~3の強度と耐久性が求められます。SOGOKAGUではほぼ全てのイスが区分4~5の高い耐久レベルをクリアするように試験を行い、継続的に改良を行っています。
-美しく丈夫なコントラクト家具を目指して
SOGOKAGUが目指すのは「美しく丈夫なコントラクト家具」。
SOGOKAGUでは、デザインが良いだけではなく、座り心地はもちろん、コントラクト空間でも不安なく使えるだけの十分な強度と耐久性、そして安全面も考慮した開発を行っています。次回は、その中でもSOGOKAGUが考える「座り心地」にフォーカスしたコラムを予定しております。お楽しみに!!