そして、モールドウレタンを家具の素材として取り入れるきっかけとして忘れてはならないのが現在のB&B Italiaの創設者、ピエロ・アンブロージオ・ブスネリです。
ピエロは当時、伝統的な工法では熟練工が必要なため、事業が拡大しても利益が上がらないことに頭を抱えていました。そんな時、ロンドンの見本市で液体を型にいれると膨らんでアヒルの玩具が出来上がる様を偶然見かけ、その製造方法を家具に取り入れることを思いついたと言われています。しかし、この製造方法には相当な設備投資が必要となりました。そこで、ピエロは友人の親戚であるチェザーレ・カッシーナに出資を持ちかけました。スーパーレジェーラなど数々の名作を生み出したカッシーナ社の創業者です。チェザーレはピエロの提案に乗り、1966年、ピエロとチェザーレの頭文字を取ってC&B Italia(現在の
B&B Italiaの前身)を設立しました。創業間もないC&B Italiaにはマリオ・ベリーニやアフラ&トビア・スカルパなどのデザイナーが関わり、ベリーニは「アマンタ」を、スカルパは「コロナド」をデザインし、人々はモールドウレタンだからこそ可能となった新しいデザインに魅了され、大ヒット商品となりました。
-モールドウレタンでオンリーワンを目指して
日本で最初にモールドウレタンを家具に取り入れたのは1969年、アルフレックスジャパンが発売した「MODEL7」だと言われていますが、SOGOKAGUは1980年代後半、当時取引のあった会社でモールドウレタンの開発をスタート、2001年に初のオリジナルデザインである「
リムカ」を発表し、そこからSOGOKAGUは「モールドウレタンでオンリーワン」の追求を始めます。
2010年にはケイクを発表し、2015年、
ケイクⅡアッシュが、当時はコントラクト市場で珍しかった木製チェアとして、高いデザイン性と耐久性の両立を評価され、グッドデザイン賞を受賞、その後、2019年に京都工芸繊維大学との産学連携で生まれた
ヴィストは、モールドウレタンだからこそ成し得たその薄さと強度の両立を評価され、グッドデザイン賞とiFデザインアワードを受賞しました。
その後もSOGOKAGUはモールドウレタンの商品を次々に発表しますが、その裏にはSOGOKAGUがこだわってきた張りの技術があります。モールドウレタンでは自由な3次曲面が可能になりますが、それは同時に張りの難しさに繋がります。SOGOKAGUではモールドウレタンが生み出す美しいラインを、生地を張った状態でもいかに美しく見せるかを考えて裁断、縫製まで計算しています。また、張りの美しさを追求し、業界で初めて、それまで女性向けのアパレルなどに使われていたコンシールファスナーを家具に採用しました。
また、2024年には原料の一部を植物由来のひまし油に置き換え、環境に配慮した新しいモールドウレタンである
ケイクⅡアッシュ バイオタイプを発表、そして同年、背と座を分割構造にすることで座面の柔らかさを実現したケートスなど、さらに進化したモールドウレタンの開発を進めています。
これからは、環境に配慮したバイオタイプの展開の強化や薄さや柔らかさの研究に加え、軽量化を図る試みなど、さらに進化したモールドウレタンの追求、まさに「モールドウレタンでオンリーワン」である家具メーカーへの挑戦を続けています。
モールドウレタンってなに?(全3回)-デザインと快適性の追求-Vol.1 ウレタンについて
モールドウレタンってなに?(全3回)-デザインと快適性の追求-Vol.2 モールドウレタンについて