モールドウレタンってなに?(全3回)

-デザインと快適性の追求-Vol.2 モールドウレタンについて
-ウレタンフォームの種類
前回お話した、ウレタンフォームを成型する方法にもいくつか種類があります。

まずひとつがスラブ成型ウレタン。スラブとは英語の「slab」で「板」や「ブロック」といった意味があります。ウレタンの原材料であるポリオールとポリイソシアネートを大きな容器の中で発泡させ、固まったウレタンを長方形にカットしたもので、形状がブロック状になるのでスラブウレタンと呼ばれています。カットされたスラブウレタンは、その比重によっていくつかの種類があります。比重とは、水1gと比べた時の密度のことを言います。比重が低いウレタンというのは大きな気泡の粒がたくさんあって柔らかく、逆に比重が高いウレタンというのは気泡が細かく密集しており、触った感触は固くなります。一般的にソファなどの場合は、この比重の違うスラブウレタンを組み合わせることで座り心地を調整しています。

ウレタンフォームのもうひとつの成型方法がスプレー発泡ウレタンです。こちらは名前のとおり、ポリオールとポリイソシアネートをスプレーで吹き付けるウレタンです。吹き付けると数秒で発泡して膨張し、数分で硬化します。凹凸や隙間にも密着するため、複雑な形状の箇所にも適しており、主にサッシ周りなど建築工事で使われたりします。

そして最後にご紹介するウレタンフォームの成型方法が今回の主役、モールド成型ウレタン、いわゆるモールドウレタンです。
 
-モールドウレタンについて
モールドウレタンのモールドとは英語の「mold」から来ており、「型」や「鋳型」という意味です。

名前のとおり、モールドウレタンは原材料であるポリオールとポリイソシアネートを鋳型の中で発泡させ成形する方法で、型に沿った高密度のウレタン壁が成型されることがポイントです。金型に原材料を流し込み、化学反応で発泡・硬化させることで、複雑な形状の製品を作ることが可能になります。
これによりデザインの自由度はかなり高くなります。その作りたい形状の自由度の高さから、身近なところでは、自動車のシートクッションやハンドル、そして私たちが製造しているイスやソファの芯材やマットレス、スポーツシューズのソール部分や医療分野での体圧分散用クッションなど、生活用品から産業製品まで幅広い分野で重宝される素材です。
 
-軟質と硬質
モールドウレタンも、先ほどウレタンフォームのところで説明したのと同様、主に軟質モールドウレタンと硬質モールドウレタンの2種類があります。

軟質モールドウレタンは発泡したウレタンの気泡が連なっていてクッション性や耐久性に優れているのが特徴です。軟質モールドウレタンが他の軟質ウレタンフォームと比較して優れているポイントは、その被膜構造にあります。軟質モールドウレタンは製造工程において、ウレタンの原材料を金型に注入して発泡することで、金型との接着面にスキン層と呼ばれる薄いウレタンの被膜が形成されます。この被膜がウレタンのヘタリを防止する枠として機能することで耐久性を維持する特徴があります。また、この被膜は圧力がかかった際に被膜が引っ張られることで周囲のウレタンに放射状に圧力が分散され、体圧分散に優れているのも特徴です。それにより軟質モールドウレタンでは、座った人が包み込まれるような快適な弾力を実現することが可能になります。

それに対して硬質モールドウレタンは硬度と剛性が高く、独立した気泡の一つ一つに熱伝導率が極めて小さいガスが含まれているため、断熱性に優れているという特徴があります。衝撃吸収性も高く、イスの芯材や自動車の衝撃吸収材、住宅の断熱材などに利用されています。

では、次回のコラムでは、モールドウレタンが家具に使われるようになった歴史からお話しようと思います。