フラッターもヴィストと同様、京都工芸繊維大学製品デザイン計画研究室との産学連携で開発されました。最初にフラッターのデザイン案が出たのが2017年。2016年にデザイン案が出されたヴィストの翌年でした。もともと産学連携の経験がなかった当社にとって、最初は「探り探りだった」と当時の担当者は語ります。周りからは、産学連携は企業側が学生に振り回される、といった噂話も聞いていたので、1年目は学生の力量を見る、といった感じで、特に当社が得意とするモールドウレタンの商品は学生には望めないだろう、と考えていました。ところが、1年目からヴィストのようなデザイン案が出てきて、学生の新鮮な視点と「勢いのようなものを感じた」我々は、当社からは具体的な指示をせずとも、「学生の力量に可能性を感じる」ようになっていました。
座り方をデザインする
フラッターのデザイン案が出された2017年のテーマは、2016年のテーマであった「SOGOKAGUらしさ」を再検討し、デザインコンセプトとして「つつましさ」、「しとやかさ」、「凛」を意識したデザインアイデアを出してもらいました。いくつか出てきたデザイン案の中で女性の髪の流れをモチーフにデザインされたのがフラッター。「座り方をデザインする」というコンセプトで左右非対称の造形により様々な角度で座ることを可能にし、SOGOKAGUのアイデンティティでもある「MEETALK」を体現し、自然と会話を演出するチェアとしてデザインされました。非対称の有機的な造形から色気の中に「凛」とした佇まいをイメージさせ、落ち着きのあるホテルのラウンジから重くなりすぎないカジュアルダウンなシーンなど、実際に使われるシーンまで想定した提案でした。
THE PROCESS
しとやかさを表現するために
フラッターはヴィストに比べると難易度は高くなかったものの、モールドウレタンの課題でもある薄さの追求にはこだわりました。ヴィストと同様、DESIGN LABOにて原寸モデルを削り出し、形状のブラッシュアップを繰り返します。左右非対称であったため、「座り方」の検証を積み重ね、座り心地の良さはもちろん、あらゆる姿勢での座りやすさが求められたのです。また、張りにおいても女性の髪をイメージした「しとやかさ」を表現するため、インカーブな形状でありながら無駄な縫製ラインを入れない工夫が必要となりました。
こだわりの脚部ラインナップ
もともとフラッターは木製脚のデザインも同時にされていましたが、ヴィストにも採用されているアルミ脚のBAJもラインナップしています。当時は回転脚の案も出ていましたが、「フラッターの座りの自由さ」をより活かすのであれば固定脚に絞ったほうがいいだろうという結論に至っています。そして2023年には、ST脚を新たにラインナップしています。